イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活


「どこかに寄りたいところはあるか?」
「あ、スーパー。ちょっと食材を買い足したい。お疲れじゃなかったら」
「疲れてはいないが、そういうことじゃなくてだな」


何か、私は見当違いのことを言ったらしい。隣を見上げると、困った顔をした郁人がいた。


「スーパーはどうしても今日行きたいのか?」
「いえ、そんなことはないけど」


まったく食材がないわけじゃないから、朝ご飯もどうにかなるし、別に明日でも構わない。


「……じゃあ、一軒付き合ってくれ」


郁人に着いて歩いて、ほんの数分ほどだった。お洒落なレディースファッションの店舗の間に挟まれて、半畳ほどの幅の階段が半地下に向かって下りている。
そこには、暖色のアンティークランプが重厚な扉をほんのりと照らすしっとりとした大人の雰囲気が溢れていて。
その扉を押し開くと、細長い空間が広がりクラシックの音楽が流れていた。


「バー?」
「たまに来る。歩実も賑やかな居酒屋よりこういう店の方がいいだろう」


確かに居酒屋は苦手だけれど、かといってこんなお洒落なバーに来るのは初めてだ。


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