イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
しっとりとした夜の空気が漂う、落ち着いた良い店だと思う。騒がしい客もおらず、皆店の空気に合わせてか、そういう客が集まるものなのか静かに会話と音楽を楽しみながら飲んでいる。
最初の慣れない抵抗感が和らいでくると肌に馴染むように居心地がよくなった。
「郁人はよく来るの?」
「たまに。最近は忙しくて、今日は随分久しぶりだ」
「ふぅん……」
「そうそう、轟さんが寂しがってましたよ」
バーテンダーがふっと思い出したように郁人に言った。
「トドロキさん?」
「佐々木さんと同じく、うちの常連さんなんです。気のいいおじさんで面白い方なんですけどね。もくもくと飲む
佐々木さんに平気で絡んでいくのが面白くて」