イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
どうして彼が、突然この店に連れてきてくれたのかは、結局わからない。
ただ静かに、ふたりでお酒を飲んで、沈黙が続けばお互いに携帯を見ていたりと相変わらずの個人プレイだ。

バーテンダーさんには、「不思議なご夫婦ですね」と興味津々でそう言われた。残念ながら、トドロキさんという人には会えずじまいだったが。


「あんなに美味しいカクテル、初めて飲んだ」
「そうか」


しかし、普通に居酒屋でチューハイやビールを飲むより、酔ってしまったかもしれない。そんなにたくさん飲んだつもりはないのに、足元がふわふわとしてほろ酔い気分だ。
大きく深呼吸すると、夜の空気がほんの少しだけ身体を冷やしてくれて気持ち良い。


「明日なんだが」
「うんー?」


駅まで歩く道すがら、郁人が不意に話しかけてくる。私はなんとなしに応えながら、そういえばこれってデートになるのかな、なんてことを考えていた。河内さんに明日聞かれたら、デートしたと答えてもいいのだろうか。

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