イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「何か急ぎの仕事がありましたら、私にもどうぞ。今余裕ありますから」

 二つ年下の、河内ゆかりだ。ふわふわと女性らしいフォルムのスカートやシフォンやレースを好む。くるりと上品なウェーブの髪も甘くて優しい雰囲気を作っていた。
 言わずもがな、佐々木さんをロックオン真っ最中である。彼が私にばかり頼むのが気に食わないのか、私と話す時は声がワントーン下がる。もちろん、他に誰も見てないことが前提だけれど。

「園田さんばかりじゃ大変でしょう?」

 そう指摘されて、彼が私に目を向けた。

「間に合わないなら手分けしてもらってもいい」
「問題なく終わります」
「だ、そうだ」

 空気を読んで「ちょっとしんどいです」とか言った方がいいのかもしれないけれど、私から仕事を取り上げないで欲しい。仕事をしている方が早く時間が過ぎて楽なのだから。

 河内さんは不満がありそうだったが、それ以上何も言わなかった。
 佐々木さんもそのまま自分の仕事に戻るのかと思いきや。

「それと、昨日の話だが」

 いきなり、お見合いの話を振られそうになり慌ててキーボードを打つ手を止めた。

「お待ちください。その件でしたらミーティングルームで」

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