イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 河内さんの目の前でお見合いの話なんか出されたらたまったものではない。急いで作業中のデータを保存し、デスクの上にあった適当なファイルを手に持って仕事のフリをしながらその場を離れた。


 ミーティングルーム入口の札を使用中へと切り替える。


「まだその話は、オフィスでされたら困ります」


 今回のお見合いの話は、オフィスでは絶対秘密でと昨日お願いしておいたはずなのに!


河内さんみたいな人が冗談抜きであちこちにいるのだ、迂闊に口に出さないで欲しい。婚活女子ネットワーク(勝手に命名)に目をつけられて仕事がしづらくなるのは、困るのだ。


「わかっている。必要事項の確認だけしておきたかっただけだ」

「必要事項ですか」

「指輪のサイズを聞き忘れた」

「ああ……」


 その話、尚更オフィスで出されたら困るんですけど。秘密の意味をこの人は本当にわかっているのだろうか。
 ていうか、昨日の今日でもう指輪の話って、色々とすっ飛ばしすぎにもほどがある。

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