イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「そんなことは関係ないだろ。会社は友達ごっこをしにくるところじゃない、仕事をするところだ」
「それはそうなんだけど……」


 こういう考え方は本当に私と彼は似ているなあと、苦笑してしまった。けれど少なからず、彼と関わるようになって私の方は考え方も変わってきていて。


「心配してくれてありがとう。でもちょっとずつ、私からも周囲とわかりあう努力はしてみようかなって思ってるから」


 そう思えるのは、郁人との時間が全く苦じゃないからだ、きっと。

 コーヒーのカップを手に持って、一緒にオフィスに戻ろうとして、ふと、思いつく。

 
「……もしかして、一緒にお昼食べるようになったのって気を使ってくれてた?」
「そんなつもりじゃない。同じオフィスにいるなら一緒に食べたらいいと思っただけだ」


 郁人はそう言ったけれど、多分間違いなく、そうなんじゃないかと思って。
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