イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
見積書はその日の午前中に出来上がり、印をもらって回るのを郁人にお願いした。
「そっちは間に合いそうか」
「今日一日あればなんとか」
そう言うと、郁人がくすりと笑う。
「さすが」
たとえ落ち込んでいようと狼狽えていようと、仕事には影響しない。早くて、正確。
それが私のステータスだ。
「でも、今日は集中するからお昼は別々にしたい」
「そうだな、俺もこれから部長ふたりと取り締まり役のところに回ってくるから、何時になるかわからない」
本当は、今日こそ一緒に食べたいような気持ちもあって。
だけど、郁人の方も時間に余裕がなさそうで、あっさりと頷かれたことが寂しかった。ふたりでお弁当を食べる時間が、いつのまにか私の中で一日の中の重要な時間になっていたようで。