イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

面と向かって公言されてしまったら……今のように平気な顔を保てるかわからない。

正面の河内さんは、真剣な表情でまっすぐに私を見据える。私も真剣に聞かなければと、覚悟を決めて見つめ返した。

視線があった河内さんは、ぴくりと頬を引きつらせていたが、次の瞬間。


「今日は、本当に申し訳ありませんでした！」

彼女がぺこりと頭を下げた。
栗色に染まった綺麗な髪の旋毛を見ながら、拍子抜けする。

「え……え？　何が？」

あ！
『佐々木さんを好きになってすみません！』ってこと？

どちらかといえば強気な感じで来るのかと思っていたけれど……いや、つまりそれだけ真剣、ということなの、かな？

そう思うと、鼻の奥がツンと痛くなる。
胸の中が軋んで嫌な焦燥感に襲われた。

『河内さんが何と言おうと、妻は私だから』

そういう資格が私にあるのかな？
頭の中ではそんなことが渦巻いていて、いろんな感情が溢れてくるのにそれを言葉にすることが出来ない。

だけど、またしても彼女は私が思っていることとはまったく違うことを言う。