恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
食後はリビングのソファに座り、コーヒーを飲みながら昔話をしていた。
事故の時しか会わなかった2人だけれど、住んでいた地元は同じで、共通の話題が多かった。
近くの公園の話や駄菓子屋の思い出、夏祭りの神社など、話しが盛り上がっていた。
ふたりで話ながらも、律紀はしっかりと夢の手を握っており、夢は本当に恋人になったのだと実感していた。
「あ、もうこんな時間なんですね……。」
律紀が壁にある時計を見て、そう呟いた。
夢も倣うように見ると、日付が変わりそうな時間になっていた。
楽しい時間はあっという間なんだなと、夢は実感しながらも、夜中になってしまった事に驚いた。
そろそろ電車の時間もなくなってしまう。
夢は慌ててソファから立ち上がろうとした。
けれど、隣から伸びてきた律紀の腕がそれを阻んだ。
とても力強くて熱い手に腕を掴まれて、夢は戸惑ってしまう。
「律紀くん……….?」
「夢さん、帰るんですか?」
「うん。そろそろ電車もなくなっちゃうし。」
「………せっかく恋人になったのですから、泊まっていかないんですか?」
「え………。」
律紀の言葉を理解するのに、夢は1度体を止めて考えてしまった。
恋人相手である男性に、「泊まって。」と言われる意味は夢だってわかっている。
前回、律紀の家に泊り、一緒の布団で寝たけれど、それは律紀の体調が悪かったからだ。
けれど、今回は状況が全く違う。
それに、先ほど恋人同士になったばかりだ。
恋愛に不馴れな彼だけれども、そう言うことは積極的なのだろうか……などと考えては、夢は1人で赤面させた。
「夢さんは、そういうのはしたくないですか?」
「し、したくない?!……そういうわけじゃないけど、やっぱり恥ずかしいかなぁーって思って……。」
「そうですか。この間、僕は一緒に寝れたの嬉しかったので、今日も一緒に寝れてらなーと思って誘ってしまいました。」
その言葉は、夢にとって嬉しさ半分と、切なさ半分の、微妙な気持ちにさせてくれるものだった。