恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
12話「幼い泣き顔」





   12話「幼い泣き顔」




 夢はスーパーなどに駆け込み、いろいろと食材や調味料、そして料理器具も買った。
 律紀は全く料理をしないと言っていたので、もしかしたら自宅のキッチンには何もないのかもしれない。そう思ったのだ。


 「うぅー………重い………。買い込みすぎたかな。」


 律紀に教えてもらった住所で地図を出して、ヨタヨタと歩き回る。
 そこは閑静な住宅街で街中であるのに一軒屋が建ち並んでいた。彼は一人暮らしと聞いていたので、マンションを探しているが、それらしき建物は見当たらない。


 「ここら辺なんだけど………んー………あっ、あれは。」


 夜道で夢が見つけたのは、見覚えのある車だった。ネイビーの外車。少し前のデートで、律紀が夢を乗せてくれたものだった。


 「ここに律紀くんの車があるってことは………この一軒屋が、律紀くんのおうちなの?」


 夢は、口をあんぐりと開けてその建物を見上げた。二階建ての白い壁に黒の屋根、そしてその建物や敷地自体が普通の一戸建ての物より大きかった。そして、どうみても新築でとてもピカピカしている。
 本当にここでいいのか。こんなところに、一人暮らしをしているのだろうか?
 それとも、もしかして本当は誰かと一緒に住んでいるのか。

 様々な不安が夢を襲ったけれど、それでも家を訪ねなければわからない事だ。

 夢は重い荷物をもう一度持ち直して、新築のような家のドアの前に立った。
 左腕は役に立たないので、すべての荷物を右手で持っており、夢の左腕は赤くなりプルプルと震えていた。もうそろそろ腕の限界のようだった。


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