恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。
右手は塞がっているので、左手で呼び鈴を鳴らした。
すると、インターフォンから返事もなく、突然玄関のドアが開いた。
「………夢さん、わざわざすみません。」
「律紀くん!真っ青だよ!?……大丈夫?」
「眩暈が酷くて……。」
「それは辛いよね。ドア開けてくれてありがとう。律紀くんは寝ててね。」
「………すみません。」
出迎えてくれた律紀は、フラフラしており顔にもいつものにこやかな笑顔はなかった。
顔は真っ青で、涙目にもなっており、時折酷い咳もしていた。
「ここが、一階の奥でリビングと台所です。僕は、手前の部屋にいるね。」
「寝室、2階じゃないんだね。」
「はい。2階は全く使ってないんだ。」
「そうなんだ……あ、スポーツドリンク持ってきたけど飲む?」
「ありがとう。のみたいな。」
夢は荷物からドリンクを取り出して彼に渡すと、律紀は驚いた顔をしていた。
夢が不思議に思って「どうしたの?」と聞くと、律紀は「すみません……。」と謝り始めた。
「こんなに沢山買ってきてくれたんだね。鍋とかまで……。」
「あ、律紀くんが料理しないって言ってたから。ないのかなぁーって私が勝手に思って持ってきただけだから。」
「………本当に何もないので……ヤカンと小さな鍋ぐらいしかないんですよ。」
「そうなんだ。よかった!」
「……夢さん、腕大丈夫?重かったよね?」
「大丈夫だよ!さ、律紀くんは寝ててね。おでこ冷やすのも買ってきたから熱があるときは言ってね。」
夢は、律紀の肩をポンポンと優しく叩いて寝室に行くように促した。律紀は申し訳なさそうに何度も謝りながら寝室へと戻っていった。
それを見送ってから、夢はキッチンへと向かった。