水瀬くんは浮気をする生き物です
目が合うだけでいい。おはようって言いたい。話がしたい。隣を歩きたい。手を繋いでみたい。私だけに、して欲しい。
どんどんどんどん貪欲になっていく自分がどうしようもなく浅ましく思えて、目を背けるようにぎゅっと固く瞑ってみた。
「ねむい?」
「う、ん」
「じゃあ、1限終わったら起こすね。おやすみ」
髪を撫でる蒼くんの手が優しくて、いつもより吐息を多く含んだウィスパーボイスが心地よくて。
どきどきと、切ない気持ちと、今だけは蒼くんを独り占めしていたいというずる賢さ。
ぐちゃぐちゃになった全部を無視するように、蒼くんの胸に顔を埋めた。
「ばか、反則…」
いつの間にか授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた校舎は誰の足音も聞こえないくらい静まり返っていて、どこからかそんな声が聞こえたような気がしたけど、密着した2人分の体温には抗えず。
案外すんなりと、意識を手放していた。