私の未来は、君がくれた光
最悪な気分で家に帰ると、玄関には珍しく父親の靴があった。
父親は普段仕事で忙しく、たいてい泊りか帰ってきても夜中なのだ。
「ただいまー」
小さな声でつぶやくようにそう言った。父親が早く帰ってきているときは、母親ともめ事をしているからだ。
リビングではかすかに怒号が聞こえる。なるべく足音を立てないように通り過ぎようとしたら、母親に呼び止められた。
「璃乃。お父さんとお母さん、離婚するから。どっちについていくか、決めなさい」
お母さんが静かに、怒りを含んだ声で言った。
それに対して、父親が大きな声で叫ぶ。
「おい、勝手に決めるなよ。まだ離婚とまでは決まっていないだろう」
母親は顔をしかめ、今度はあきれたように言った。
「まだそんなことを言っているの?もう決まったようなものじゃないの。さあ、決めて、璃乃」
父親がまだ何か言っていたが母親は聞く耳を持たず、私の返答を待っている。
男の人、主に父親が昔から大嫌いな私は、どっちか選べといわれたら答えは決まっていた。
「・・お母さん」
そういうと、父親は舌打ちをしてリビングを出ていき、母親は私に家を出ていく準備をしろと言った。
私は自室に行き、大きなボストンバッグに荷物を入れて、ぼんやりと考えた。
恋人に振られ、両親が離婚を決め、今は引っ越しの準備。今日は散々な一日だな。
離婚して引っ越す、ということは、少し遠いところに行くのだろうか。
だとしたら、学校も転校するのではないか。
そう考えたら自然と頬が緩んだ。樹弘と顔を合わせなくていいのだ。
そう思ったら、私は引っ越しの準備を嬉々として進めていたのだった。
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