チャラ王子に捕まりました。
音楽の素晴らしさを伝える、なんて大きな夢を持ってても、私なんかには無理に決まってる。
というか、コンクールにも出れないくせに私は最終的に何になりたいんだろう。
込み上げてくる想いに、スカートを両手で握りしめる。
「なんかいいね、そういうの。音楽をやっててひなちゃんが本当に辛いって思うなら俺は止めない。でも、ピアノをやる意味があるなら、俺は続けた方がいいと思う。大好きなら尚更ね」
「……」
「最初はみんな自分には合ってないって感じると思うよ。でも、人も音楽も向き合うことで見え方が変わってくるんじゃないかな?その証拠に俺、今日ひなちゃんに話しかけてよかったって思ったし」
「…え?」
私の頭にポンポンと優しく右手を乗せる晴琉くん。
その動作に顔が熱くなるのが分かり、慌てて両手でほっぺたを触る。