俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
以前ここに来たときにそのおばあさんがちょうど来店していて、〝手紙を書くのが趣味なのによく売っているボールペンや万年筆では書きづらくなってしまった〟という話をしていた。
それを偶然耳にした私がそうした人でも使いやすいボールペンを探し、三谷商事を介して輸入してもらったのだ。
「それはうれしいです。まだ在庫がありますので、すぐにお届けしますね」
「ありがとう。もっといろんなところで売り出せばいいのに。知らないだけで、欲しい人はたくさんいるはずよ」
それを聞き、大きくうなずく。
どうしても大衆受けのする商品の販売にばかり目がいきがちだけど、こうしたかゆいところに手が届く商品を待ち望んでいる人がいることはよく知っているからだ。
小学生の頃、成田(なりた)まどかちゃんというお友達が事故に遭い、その後遺症で手を動かしづらくなってしまった。
それで鉛筆もうまく握れなくなり沈んでいた彼女と一緒に文房具を工夫して使っていたのが、この仕事に就くきっかけになっている。