俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
それから二時間。
いつの間にかフロアの人が減っていて、もうひとり残っていた男性社員も帰っていく。


「もー、エクセル苦手なんだから。計算式は入れておいてよ」
 

誰もいなくなったので、文句を声に出す。
 
完全にサービス残業なんだから、これくらい言わせて。


「これ、計算機のほうが早くない?」
 

エクセルの扱いがわからなくてデスクの引き出しから計算機を取り出すと、「あははは」と笑い声が聞こえてきたので顔面蒼白になる。

まだ誰かいたの?


「高遠ってそんなキャラなんだ」
 

え、この声は……渡会さん?
 
呆気に取られて固まっていると、どうやら奥のサンプル置き場にいたらしい彼が近づいてくるのがわかった。
 
よりによって王子にこんな姿を見られるとは。
 
それにしても、いつも〝高遠さん〟なのに呼び捨てした?


「あっ、えっと……」
「ま、知ってたけど」
「はいっ?」
 

知ってたって、私がアナログ人間だということを?
 
思いきって彼を見つめると、片方の口角を上げてニヤリと笑っている。
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