俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
彼には感謝してもしきれない。
「報告しなくちゃ」
たった二本しか売れていないと言われればそれまでだけど、私にとっては本当にやりたいことを叶えるための重要な第一歩だった。
そのあと、数軒の得意先を回り十八時近くになって帰社すると、少し離れた席の渡会さんはすでに戻ってきて電話をしていた。
いったん自分のデスクに戻ったが、予想以上の書類が山になっていてため息が出る。
坂巻さん、本当に全力でやったのかしら。
書類をチラチラめくりながら、私は渡会さんのことを見ていた。
電話が終わったタイミングで彼のところへ行こうとしたけれど、牧野さんが私より早く席を立ち、彼と話し始める。
牧野さんの用件が終わると今度は部長に呼ばれていて、まったくフリーになりそうにない。
「無理、か……」
忙しそうな渡会さんを尻目に、私は自分の事務処理と頼まれた入力を始めた。