俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~
「ですから、違います」
「だって、背の高いイケメンと英語で話しながらデートしてるのを見たっていう人がいるよ?」
それは誰のこと?
英語なんてまったく話せないんだけど。
「本当に違うんです」
「牧野さん、この書類のチェックお願いできますか?」
そのとき、左腕に収まる高級時計にチラッと目をやり、牧野さんに書類を手渡したのは、第二営業部のエースの渡会瑞樹(わたらいみずき)さん。
たしか三十三歳。
身長は百八十センチを超えていて、すらっと長い足。
黒目がちでアーモンド形の目を持ち、鼻筋は通っている。
少し癖のある髪をうまくまとめていて、スーツがよく似合う完璧な男。
彼は提携している『三谷(みつたに)商事』という大きな商社に三年近く出向していたが、戻ってきてもうすぐ四カ月。
以来、トップの実績をキープしている。
こうして武者修行に出るのは優秀な社員のみで、将来の幹部候補と言われるほどの実力の持ち主だ。
「わかりました」
「いつも本当に助かります」