叶わぬ恋…それでもあなたを見ていたい

『落ち着いたか?』





少しして、藤堂先生に聞かれ、うんと頷いて返事する。





『ずっとここの生活では辛いよな。



今は何もしなければ、胃腸も安定していて帰っても生活はできると思う。




食事制限をしっかり守れて、異常があった時にはすぐに病院に来ることを約束できるのなら、一時帰宅という形で一度退院してみないか?』




「えっ?一時帰宅?退院じゃなくて?」






『あぁ。退院に向けてのお試しのようなものだ。




だけど、前みたいに固形物を口にするようなことがあれば、また戻ってきてもらうことになるぞ。』






念を押されて、確認される。
食事制限か……。
まだ変わらない毎日なのか…。





『どう思う?』





「帰れるのは嬉しい……。」





けど、また戻ってくると思うと辛いなぁ。





それに食事制限もまだ続くんだもんな。





『数日の間だけど、一度外の空気を充分に吸ってきて、また戻ってきてから、治療を始めよう。』





治療ったって……何もしてないのに。





何が始めるのか…。聞きたいけど、嫌なことだったら耳にしたかないから、黙っておこう。




『気が進まない?』





田中先生に胸の中を聞かれているみたいでドキッとする。




「ずっと家にいたかったから。」





『本当はこのまま入院していた方が、今はいいんだけど、この頃の美咲ちゃんの様子を見て決めたんだよ。




お父さんが今なら、お仕事で出張することもないようだから。』





お父さん、言ってくれたんだね。





私が帰りたいことを、先生たちに話そっかと言ってくれたけど、黙ってるつもりだと思ってた。
私に気休めに言っていたんだと思った。





お父さん、ありがとう。






そうして、私の一時帰宅が決まった。
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