恋を忘れたバレンタイン
「そろそろ、帰るわね。これ以上迷惑からけれないわ…… 本当にありがとう」

 私は、そう言って頭を下げた。

 そして、立ち上がろうと顔を上げると、睨んだ彼の顔があった。


「主任は、仕事も出来るし、上司から信頼されているし、部下の教育だってきちんとしていますよね……」

 突然の、彼の褒め言葉に戸惑う。

「そんな事はないわよ」

 嬉しくないわけではないが、真面目に恐縮した。


「だけど……」

「だけど?」

 私は、首を傾げ聞き返した。


「主任は、バカなんですか?」


「はあ?」

 思わず声が上がった。



「夕べどれだけ熱があったと思うんですか? 三十九度を超えていましたよ」


「な、なんで、そんな事知っているのよ?」

 夕べ熱を測った覚えがない。
 彼は、勝手に私の熱を測ったんだ。

 てことは、トレーナーの中に手を入れた? 

 私が彼を睨むと、一瞬ひるんだが直ぐに冷静さを戻してしまった。


「まだ、完全に熱が下がったわけではないと思いますよ。しかも風呂に入った後で、こんな寒空に外に出たら、ぶり返すに決まっているじゃないですか? そんな事、小学生だって解りますよ」

 呆れたような目を私に向けた。



「わ、わかっているわよ、そんな事。でも、迷惑だと思うから言ってるのよ。大人だからそう言う判断するでしょ!」

 私は、何ムキになっているのだろう? 

 明らかに彼の方が冷静でムカつく。
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