恋を忘れたバレンタイン
「俺が、いつ迷惑だって言いましたか? 迷惑なら初めから、あなたをここへは連れてきません」

 そう言った彼の目は、熱く私を見ていた。


「……」

 私は、何て言っていいか分からず、言葉を返せない。


「明日は土曜日です。休みなんですから心配いらないでしょ。帰るのは明日だってかまわないはずだ……」


「そう言う事じゃなくて……」


「じゃあ、どういう事ですか?」


「も、もし、誰か来たらどうするのよ…… 彼女とか?」

 私は、彼から目を逸らした。

「いませんよ。彼女なんて…… だから心配しないで下さい。本命チョコは、主任からしかもらっていませんから……」

 チラリと顏を上げると、彼は表情を緩めほっと息をついた。


「な、何言ってんのよ…… あれは……」


「そんな事はいいから、休んで下さい。やっと、熱が下がったんですから…… 俺は、まだ仕事が残っているので、この部屋にいますから、何かあったら呼んで下さい」


 そりゃそうだ。直帰してしまったのだから、報告書やら何やら仕事が残っているはずだ。


 なんだか少し申し訳なく思っていると、彼に促されるまま寝室へと戻ってしまっていた。
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