恋を忘れたバレンタイン
食事を終えれば、また、彼女の帰る発言が始まった。

そんなに帰りたいのかと思うと、なんだか切なくなる。


「バカなんですか?」

思わず出たその言葉に、彼女の顔から火が噴いた。でも、可愛いかった。
 完璧で気高い彼女に、こんな発言をする奴はいないだろう…… 
 自分だけが、特別な気がして止められなくなる。
 それに、怒る彼女も見ていて飽きない。


 でも、彼女の意外な発言に、俺の方が気持を奪われてしまった。

「も、もし、誰か来たらどうするのよ。彼女とか?」

 ちょと目を逸らした彼女の言葉に、自分の顔が緩んだのが分かる。

 彼女がそんな心配をしている事が嬉しかった。
 多少なりとも俺の事を、男として意識してもらえた気がした。


「いませんよ。彼女なんて…… だから心配しないで下さい。本命チョコは、主任からしかもらっていませんから……」


 またもや、一言多くなってしまう。


「な、何言ってるのよ…… あれは……」

 勿論、本命チョコなんかでは無い事ぐらい分かっている。

 でも、今は否定されたくない。

 俺にとっては、特別なチョコだから……


 とにかく、彼女を寝室で寝かせてしまおう。
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