海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 見上げるアーサーさんの輪郭が少しずつ滲む。
 だけど滲んでも、やっぱりアーサーさんは微笑みを浮かべているのだろうと思った。
「よしわかった。エレン、俺がその都度教えていく。だから泣かんでいい。エレンは優しい子だな」
 ……違う。優しいのは私じゃない。優しいのは、アーサーさん。
 その胸に顔を埋めれば、あふれる涙がアーサーさんのシャツに吸われた。
 そうしてアーサーさんのぬくもりと香りが、私をやわらかに包み込む。
「……アーサーさん、やっぱりアーサーさんってものすごく優しくて頼りになって、まるで父ちゃんみたいだよ。俺が乗ったのがアーサーさんの船でよかった。アーサーさんと一緒でよかった!」
 アーサーさんが、一瞬ピキンと硬直した気がした。
「そ、そうか! だがエレンだって小姓として、とてもよくやってくれている。エレンがいてくれてよかった! これからもまだ海上の旅は長い。ますます、仲良くやっていこうじゃないか!」
 アーサーさんはそう言って、私をやわらかに抱きしめて微笑んだ。
「うん!」
 私も目いっぱいの笑みでそれに応えた。


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