海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 ……うん? だけどそういう意味じゃ、私の薄めの髪色や肌もどことなく目の前のふたりに通じてやしないか……?
 ふと、そんなことを思った。
「……ローシャル伯父上、俺はあなたとの初対面がこのような形になってしまったことが悔やまれてなりません」
 少しの間を置いて告げられたこの台詞に、爺さんは答えなかった。
 アーサーさんもそれ以上は言葉を重ねずに、ずっと拘束していた爺さんの上から慎重に退いた。
 けれどアーサーさんの拘束がなくなっても、爺さんはなかなか起き上がれずにいた。
「ローシャル伯父上、掴まってください」
「……年寄り扱いしおってからに」
 爺さんは先ほどとは真逆の持論を展開しながら、結局アーサーさんの手を借りて、緩慢な動きで身を起こした。
 ……俊敏な動きこそしてみせたものの、爺さんが高齢であることは間違いようがない。もしかすればこの接近戦で、爺さんは体にそれなりのダメージを負ったのかもしれないと思った。
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