海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
「さて、隠し持った暗器をすべて奪われてしまっては、抵抗しようにも手立てがないな。……アーサーよ、わしは降参だ。祖国への連行も、断罪もおとなしく受け入れよう。それにしても、まさかそなたのもとにエレンがおるなど思いもよらなかった。わしの人生の最後に、かようなうれしいサプライズを用意してくれるとは、まだ見ぬ神もなかなか粋なことをする」
 爺さんは途中、アーサーさんを通り越して私に視線を向けて、こんな真意のよくわからない言葉を口にした。
「のぅアーサー、叶うことなら祖国までの航海中、わしにエレンとの時間を許す温情を見せてほしいものだ」
「ローシャル伯父上……」
 そうして爺さんは、再びアーサーさんに目線を戻して言った。しばしアーサーさんと爺さんの視線が絡む。
 それにしたって、どうして爺さんが私と時間を共有したがるのか、まるっきり謎だ。
 やっぱり私、どっかで爺さんと会ってんのかな? わっかんねーなぁ……って、そんなことは、今はどうでもいい!
 私は弾かれた様にふたりに向かって駆けた。
「アーサーさん! 俺、さっきはごめん!」
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