愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─
予想外の英梨さんの行動に驚きはしたものの、今まで経験したことのない人肌のぬくもりとか、女性の胸の柔らかさとか、ほのかな柑橘系の香りと微かに英梨さんの汗の入り交じった匂いがあまりにも心地よくて、俺はこのままずっとこうしていたいと思ってしまう。

「そんなことないよ、潤くんはすごく優しいし真面目だし、全然つまらなくなんかない。私はそのままの潤くんが好きだよ」

英梨さんはきっと情けない俺を精一杯慰めてくれているんだろう。

そんなことはわかっているのに、英梨さんがそのままの俺を好きだと言ってくれたことが嬉しかった。

「ありがとう。嘘でも同情でも嬉しいよ」

俺がそう言うと英梨さんは首を大きく横に振って、俺を抱きしめる腕に力を込めた。

「……嘘でも同情でもないよ。私は本当に潤くんが好きなの……」

俺のことなんか子ども扱いしているんだろうなと思っていたから、俺はその言葉に耳を疑い、顔を上げて英梨さんの目をじっと見つめた。

「俺のことが好き……?ホントに……?」

「うん……好きだよ」

英梨さんが少し恥ずかしそうにそう言って、俺の目を見つめ返した。

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