というわけで、結婚してください!
 


 ぽすを片手に抱いた鈴の父、晴一郎《はるいちろう》は、娘の手にスマホを持たせた。

「スマホは必ず、持っていなさい。
 何処に行っても、連絡がつくから」

 晴一郎がそう言うと、鈴は、はい、と素直に頷く。

「お前が何処に行こうとも、ちゃんとお前を見守っているよ。
 ……GPSで」
と言うと、いつもなら、お父さんやめて……というところだろうが、今日の鈴は素直に頷いた。

 可愛い娘だ。
 少々間が抜けているが。

 そういうところを親の自分は可愛いと思うのだが――。

 同じように可愛いと思ってくれる男に引き渡したい、と思って、ふと、尊を見ると、娘を無理やり連れ去ったはずのこの男は、実に微笑ましげに鈴を見下ろしていた。

 だが、このまま事態が上手くおさまったりしないことを自分は知っている。

 鈴も、尊もまだ気づいていない事実があるから――。

 何故、自分が征と鈴の結婚を許したのか。

 その理由をこの二人は知らない。


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