というわけで、結婚してください!
暗がりの道で、鈴は自宅を振り返る。
建て替えたあと、初めて、この家に入ったときのことを思い出していた。
お城のようだと思った。
いや、ただ屋敷が洋風な造りに変わっただけだったのだが。
ウォシュレットの水を頭から被り、トイレの蓋に挟まれたことも。
今思い出すと、なんだか切なくなってくる。
屋敷を見上げたまま、鈴は言った。
「今度は自分の足で出て来ちゃいましたから、もう誘拐じゃないですね」
いや……もしかしたら、最初から違っていたのかも、と鈴は思う。
父の、
『いや、私には自分の足で歩いてついてったように見えたぞ。
なあ、尊くん』
という言葉を思い出しながら――。