というわけで、結婚してください!
「え、でも……」

「今更戻れないんだろうが」
と言いながら、ドアも開けずに、ひょいと跨いでオープンカーに乗った尊は、こちらを振り向き、

「早く出ないと、工場の邪魔になるだろ」
と言う。

「あっ、そ、そうですねっ」
と鈴は慌ててドアを開けると、ドレスを引きずらないように持ち上げ、車に乗り込んだ。

 不思議なものだな、と思いながら、鈴は運転席に座る尊の顔を見ていた。

 征とは、ほとんど口をきいたこともない。

 だから、整いすぎた顔のせいもあって、人形のように感じていた。

 マネキンと結婚するみたいだな、と式のときも思っていたのだが。

 尊が同じ顔、同じ体格なので、式場を出た途端に、マネキンが人間になって、動き出したような気がしている。

 ……それにしても困ったな。

 自分で出て来たわけではないのだが。

 なんだか今更戻りにくい……と鈴は走り出した車の中から、教会のある方角を見た。
< 15 / 477 >

この作品をシェア

pagetop