というわけで、結婚してください!
「征様っ。
 お時間ですよっ」
と尊と揉めていた数志が後ろから言ってくる。

「待て、数志っ。
 俺はまだ言いたいことがっ――」
と征は数志を振り向いたが、

「はいはい、お時間ですよー」
と数志は征の腕をガッとつかむ。

 はかったかのように黒塗りの車がホテルの前に止まった。

「まだ!」

「お時間です」
とさすがボディガードも兼ねているというだけのことはあり、細腕なのに意外な剛力で、数志は征を車に押し込むと、ドアを閉めた。

 自分は助手席に乗り込み、じゃ、とこちらに向かって、小さく手を上げてくる。

「駅まで急いでください」
と言っているようだ。

 その後ろ、後部座席から、窓を開けた征が叫んでくる。

「また来るからな! 鈴っ。

 すっ……!」

 まだ征はなにか言っていたが、容赦なく車は発進し、走り去った。
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