というわけで、結婚してください!
「俺だろう」

 真顔で征は言ってくる。

「……初耳です」

 今も、とてもそうとは思えない無表情のまま、征は鈴を見下ろしている。

「でもあの。
 征さんは、私とは、三度しか会ったことないがですよね?」

 それもほとんど口もきいていない、と思ったとき、征が言った。

「出会った数は問題ではないと思うが。

 お前はひとつ間違っている。

 ――四度だ」

「え?」

「俺がお前に会ったのは、四度だ、鈴」

 そして、今日で五度目だ、と征は言った。
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