というわけで、結婚してください!
 



 ……眠れないではないですか。

 鈴はこちらに背を向けている尊を見ながら、そっと、彼の唇が触れた額に手をやってみる。

 だが、ノリのよく効いたシーツはカサカサ音がして、起きて動いていると尊にバレそうだった。

 思わず、身を縮める。

『鈴、明日、九州に行こう。

 約束だからな。
 行こう、鈴』

 ……やめてください、尊さん、と鈴は思っていた。

 サスペンスとかでそういうこと言うと、十中八九殺されるんですよ。

 いや、まあ、今、そういう展開は起きそうにもないが。

 しかし、殺すとしたら、誰が……

 ぽすが?

 お父さんが?

 征さんがっ?

 数志さんがっ!?
と思ったあとで、

 ……数志さん、すみません、と鈴は数志にだけ謝る。

 数志は、征の秘書兼ボディガードのようなことをしているせいか、妙にリアリティがあるように感じてしまったからだ。
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