というわけで、結婚してください!




「夢のようですっ」

 コンビニで旅行雑誌を見ながら、鈴は言った。

「一度行けたはずの九州になかなかたどり着けないから、なにかの罠か、目くらましでもかけてあるのかと思ってました。

 そこに見えてるのに」

「いや、違うだろう……」
と尊は言う。

「そんなに時間はないからな。
 何処に行きたいか、絞れよ」
と言いながら、横で違う雑誌をめくる尊を見上げながら、

 ……そんなに時間がないと言うことは、やはり、このあと、何処かに行くつもりですね、と鈴は思う。

 いや、何処かはわかっているのだが――。

 尊はやはり、自分を家に返すつもりだ。

 確かに、このまま逃げ続けるわけにはいかないから、いっそ、一度戻ろうかと自分も思いはしたのだが。

 ……あの父親と征さんが結託してるとなると、戻ったら、帰れなさそうなんだけど、と思ったあとで気づく。

 帰るって何処にだろうな、と。
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