というわけで、結婚してください!


 


 尊がフロントに着いたとき、窪田の姿はなかった。

 若い女性スタッフが帳簿を広げ、忙しげに確認作業をしている。

 オープンセレモニーの招待状のようだった。

「窪田は?」
と訊くと、顔を上げた彼女が教えてくれる。

「あ、清白《すずしろ》様。
 支配人はレストランです。

 そこをまっすぐ行かれて、左です」
と彼女は目の前の廊下を指差したあとで、

「お気をつけてー」
と見送ってくれた。

 なにがお気をつけてなんだろうな、と思いながら行くと、レストランはまだ工事中だった。

 図面を見ながら、窪田は業者らしき男と話している。

 邪魔しちゃ悪いかな、と思い、尊は入り口に立ったまま、高い天井での作業を物珍しく眺めていた。

 すると、窪田が気づいてこちらに来る。

「どうかされましたか?」
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