というわけで、結婚してください!
「そうなんですけど。
 でも、本当に私には最高のホテルでしたっ。

 ありがとうございましたっ」
と言うと、窪田は二枚のアンケートを手に、微笑み、

「ありがとうございます。
 スタッフルームに貼っておきます」
と言ったあとで、呼びかけてくる。

「尊様、鈴様」

「またのお越しを従業員一同、心よりお待ちしております」

 そう言って、全員で頭を下げてくれた。

 車が走り出すと、森と湖に囲まれたホテルがみるみるうちに遠ざかっていく。

 走り出した車の中から振り返り、鈴は言った。

「私、絶対、お友だちにこのホテル薦めますねっ」

 拳を作って言ってみたのだが、尊は何故か、元気がなくなり、
「……そうか」
と言っただけだった。





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