というわけで、結婚してください!

 


 自宅に戻った征は何度も時計を確認していた。

 もう夜も明けたというのに、何故、鈴たちは見つからない?

 ……こんなときのために、警察官僚にでもなっておけばよかった。

 どんな手を使っても、鈴たちを追い詰めたのに、と、
「どんな職権乱用だ……」
と尊に言われそうなことを思う。

 だが、自室のテーブルに広げた地図を見ていた征は、ふと気づいて呟いた。

「此処に、建設中のホテルがあったな」
とログハウスからそう離れていない山の中腹を指差す。

「建設中っていうか、ほぼ完成してますけどね。
 オープニングセレモニーにはご出席なさいますか?」
と一晩中ついていてくれた武田数志《たけだ かずし》がついでのように訊いてきた。

「此処の支配人は誰だ……」

「ああ、窪田さんですよ」

「……窪田?」
と口の中で呟いたあとで、征は数志に向かって言った。
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