というわけで、結婚してください!




「ああ、数志。
 タッチの差だったな」

 武田数志がその城のようなホテルにたどり着いたとき、窪田はエントランスで工事現場の人間と打ち合わせていた。

 ひとりで乗り込んできた数志に気づくと、顔を上げて、そう言い、笑う。

 まるで、来るのを待っていたかのように。

「窪田さん~っ。
 なにやってるんですかっ。

 わざと逃しましたねっ」
と数志は叫んだ。

 窪田は昔、清白《すずしろ》家の執事長である父の下で働いていたので、長い付き合いだ。

 二人だけなら口を割るかと思い、他の連中は置いてきたのだ。

「なんの話だ?」
と言いながら、窪田はフロントに行く。
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