というわけで、結婚してください!
鈴が渡した紅茶を飲み、一息ついた数志が言ってきた。
「なにか小話《こばなし》でもないんですか」
何故、小話?
と思う鈴に数志が言う。
「貴方がたのせいで、疲れてるんですよ。
なにか楽しい話とかして、私を和ませてください」
「ないですよ、そんなもの。
こんな切羽詰まった状況で」
と鈴が言うと、尊は苦い顔をし、
「切羽詰まってるはずなんだが。
お前と居ると、いまいち、切羽詰まってこないんだよな……」
と文句を言っていた。
いや、私は切羽詰まっていますよ、と思いながら、鈴は言う。
「でも、まあ、昨日のホテルも素晴らしくて、なんだか和んでしまいましたよね。
うち、つい最近まで、霊でも出そうな古い日本家屋だったので、ああいう西洋のお城みたいな建物に憧れてたんです」
そう言ったあとで、思い出していた。
家が新しくなったあとで起こった惨劇を――。