イケメンエリート、はじめての純愛⁇


何故かというと、咲子の部屋の玄関外に取り付けている監視カメラは、このエレベーターを確実に向いているから。
エレベーターから降りてきた人間が、どこに用事があって、どの部屋に入って行くのか7割はこのカメラで確認できる。

その事に咄嗟に気付いた映司は、4階で降りて咲子の部屋とは反対方向へ歩き出した。
そして、歩きながら咲子へ電話をする。
部屋のブレーカーの主電源を落としてもらうために。

実際、映司の見立てでは、玄関の外に付いている防犯カメラはダミーではないかと思っている。
咲子の話ではお父様がちゃちゃっと取り付けていたらしいから。

だから、寝室のカメラだけが機能していると確信していた。
それも咲子にとっては迷惑な話だけれども。

映司は咲子の行動を信じて、咲子の部屋のドアをそろりと開ける。
計画通り、部屋中真っ暗だ。
すると、咲子は、懐中時計を持って玄関の入ったところに立っていた。


「映司さん、いらっしゃいませ。
こちらへどうぞ」


こんな異様な状況にも関わらず、咲子は笑顔だった。
その笑顔を見て、映司は少し救われる。
だって、泥棒みたいなマネをして、独身女性の部屋へ忍び込んでいるのだから。




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