嫉妬深いから

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私の左頬を右手で包み、親指でそっと撫でながら、甘い甘い眸と声で、彼が誘う。

彼は、いいヤツで。
一緒にいると、楽しくて。
友達でいてくれるだけで、充分だった。

でも。
悪いところを晒したのに、私を求めてくれた。

──やっと花を見つけた蝶のように、自分が彼のもとに強く惹き付けられているのを感じる。



──でも、怖い。
怖くてたまらない。

知らず、体が震える。

あの、身を焦がすような黒い感情。
自分で自分がコントロールできない恐怖。
『恋』をしてしまうと、確実にそうなることが分かっているのに。

ましてや、彼はとてもモテる。
彼が何も悪いことをしてないのに、寄ってきた女の人に嫉妬して、彼に嫌な思いをさせるのは目に見えてる。


──やっぱり……。





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