恋愛零度。



ねえ、奏多。

いま、どこにいるの。

なにも言わないまま、どこに消えてしまったの。

もし近くにいるなら、教えてよ……。

涙があふれて、止まらなかった。

本当はあの日、奏多がいなくなるんじゃないかって、どこかで予感がしていたんだ。

『卒業記念だよ』

なんで急にカメラなんて持ってきたのか。

『ひとりでも大丈夫なように、強くなれ』

あの言葉は、不器用な奏多の、精一杯の別れの言葉だったんじゃないかって。

あのとき、訊けばよかった。

どうしてそんなこと言うの、奏多はどこに行くつもりなのって。

訊きたいことが、たくさんあったのに。

理由もわからないまま2度と会えなくなるくらいなら、私は、なんだって言えたのに……。
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