恋愛零度。
最後に奏多と話したのは、その年の冬だった。
はらはらと細かい雪が降った日、この場所で。
久しぶりに会う奏多はなんだか、寂しそうだった。
そして、こんなことを訊いてきた。
『真白、学校、楽しくない?』
なんでそんなことを訊くんだろう、そう思いつつ、私は、うん、と答えた。
『……あんまり、楽しくない』
友達いないし、楽しいこともないし。奏多とあまり会えないからもっと楽しくないとは、なんとなく言えなかった。
そっか、と奏多は言った。
『じゃあさ、なるべく、楽しいことを考えようよ。真白はいま、なにがしたい?』
『……水切り』
そう言うと、奏多は笑った。
『なんだ、中学になっても全然変わってないなあ』
そう言いつつも、じゃあ探すか、としゃがんで石を探しはじめる奏多。
『いくよ』
『せーのっ』
『あ……っ!』
ぴょん、ぴょん、と小石が数回、水面を跳ねた。
『やったあ!』
いま思えば、水面が凍りかけていたのかもしれないけれど。
私たちは嬉しくて、小さい頃みたいに、手を取り合って笑った。
『手、つめた』
『奏多こそ』
雪が降るなか、素手で石なんて探したりしたから、私たちの手はいまにも凍りそうなほど冷たくて。
ーーカシャ。
奏多が、おもむろにポケットからデジカメを取り出して、シャッターを押した。
『えっ、なに、急に』
『なんか、写真撮りたくなってさ。卒業記念だよ』
ふうん、と頷く私に、
『真白、強くなれよ』
ふいに、奏多がそう言った。
『ひとりでも大丈夫なように、強くなるんだ』
『奏多……?』
ひとりでも大丈夫なようにって……どうしてそんなこと言うの?
前は、いつでも飛んでいくからって言ってくれたのに。
そう思ったとたん、奏多を、すごく遠くに感じた。
どんどん離れていってしまうのがわかっていたのに、止められなかった。
私はいつも臆病で。気になるのに、なにも訊けなくて。
なにもできないうちに、奏多は中学を卒業して、
そしてーー、
いなくなった。
なにも言わずに、私の手の届かないどこか遠い場所に、行ってしまったんだ。