恋愛零度。
「あれー、唯川さんじゃん?」
1人が話しかけてきて、はっと顔をあげた。
「あ、やっぱり?てか全然変わってなくてウケるんだけど」
中学のときのクラスメイトだった。
「友達できたんだ?よかったじゃーん」
キャハハ、と笑う声に、耳を塞ぎたくなった。
耳に張り付くような、嫌な嗤い声。
どうして彼女たちは、人の痛みには鈍感なのに、こういうときだけ敏感に気づくんだろう。
中3のとき、おなじクラスで、弱気な私が気に入らなかった彼女たちは、事あるごとに悪口を言ってきた。
私は1年間、それに耐え続けた。
もう2度と会いたくなかったから、2人が早々と推薦を決めていた高校を避けた。
なのに、どうして……。
こんなふうにまったく予想もしない場所で、嫌なことは、雷みたいに雲の上から降ってくる。
そのときだった。
「あんたたち、なに?」
ガタン、と三好さんが立ち上がって、2人を睨む。
「うちら楽しくお茶してるんですけど。邪魔しないでくれる?」
「は?あんたこそなに?久々に会ったから話してるだけじゃん」
「だからって……」
「……行こう」
私は三好さんの手を取って、急ぎ足でお店を出た。