恋愛零度。


はあ、はあ、と荒い息を整える。

自分の言葉が伝わらないことの悔しさ。惨めさ。

人の笑い声が怖くて、不安で。

どうにもならなくてら耐えるしかなかった日々。

奏多がいなくなって、強くならなきゃと思った。

『真白、強くなれよ』

約束はできなかったけれど、あの日、奏多が最後に残していった言葉。

そうだ、もう、誰も私を守ってくれる人はいないんだから……。

少しは変われたような気がしたけれど、ちっとも変わってない。

言いたいことも言えなくて、結局また、逃げることしかできなかった……。

ーーだけど、

「あぶなかったー。唯川さんが止めてくれなかったら、ケンカになるとこだった」

三好さんがにっこり笑ってそう言った。

「止めてくれてありがとね」

「え……?」

止めた?私が?

「こんなとこでケンカするわけにいかないもんね。あたし、すぐに頭に血がのぼっちゃうからさ」

「ううん、私こそ……かばってくれてありがとう」

小さな声でそう言うと、三好さんが笑った。

私も一緒に笑いたいけれど、

ーー全然変わってなくてウケる。

まだあの2人の嫌な声が、頭にこびりつくようにはっきり残っていて、うまく笑えなかった。
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