君との恋はあたたかいものだった。
~奈緒side~

 愛奈を部屋から見下ろすと走り出したときだった。引き出しに隠しておいた可愛くラッピングされたチョコレートを机の上に出す。

 本当は私も翔が好きだった。3人でいるときが多くて2人で話すことはあまりなかったけれど。2人でいるときまで翔は愛奈の話ばっかだった。愛奈に嫉妬したときもあったけど、いつの日からかしなくなった。

 翔は愛奈のことしかみえていないって気づいたから。私は恋愛対象外。悔しかった。なんで愛奈なの?どうして私はみてくれないの?って。そんなことは分かっていた。幼稚園のときから一緒にいたから。

 愛奈は純粋で優しすぎて。それでいて周りを明るく笑顔にできる。愛奈の良いところはもっとあるけど、挙げられきれない。愛奈には勝てないから。

 ーーピロン。
 電源をつけると、愛奈からだ。
 どうせ『付き合えたよ!』って報告でしょ?ごめん。愛奈。今はみたくないの。
 そのまま電源を切ってベッドに横たわる。

 翔。ずっと好きだったよ。白い歯をみせて、ニコッと笑う顔も。からかうと頬を紅く染めてそっぽを向く姿も。自分の好きなことに精一杯取り組む姿も。全部、全部。

「好きだった。」
 涙でふやけた包装紙が寂しそうにポツンとおいてあるのが目にはいった。
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