オトナの事情。





『次は悪い方でーす。』




ルナは、明るい口調とは裏腹に、少し不安そうに俺の腕に自分の腕を絡める。








『…1月にこの家を出ることに決まりました。』





「…そっか。」



『うん。』







なんとなく、そういうことかな、とは思ってた。




あの日、ルナの誕生日にそのことを聞いて以来、お互い覚悟しながら過ごしてきた、と、思う。




お互いに、どれだけ忙しくても、家に帰って来れる日は必ず一緒にご飯を食べたし、時間があればゲームもしたし、仕事中も同じ局にいると分かれば時間を作って会いに行ったし。

テレビを見て、映画を見て、ライブDVDも見たし、ラジオも沢山聞いた。




オフが合うことなんて無かったから、デートこそしなかった。


でも。


俺たちは、期限付きの恋だと分かっているからこそ、何気ない毎日を大切に過ごしてきた。


小さいことから大きいことまで、俺の今までの28年間の人生で、1番、笑った。


1番、幸せだった。







だから、悔いはない。


俺たちにできる精一杯の毎日は、手にしたから。



ルナもきっと、同じ気持ちでいてくれると、思うんだ。



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