オトナの事情。





『楽しかったよね。』



「…悔しいけど、めちゃくちゃ楽しかったわ。」



『あっという間だった!ドラマやってたのとか懐かしいね~』



「そうなんだよね。元はと言えば、そのためにここに来たんだよね。」




それはまだ、桜が咲いていた頃の話だ。

今はもう、秋も終わりそうじゃないか。



そう考えると、ずいぶん長く一緒にいたのかもしれない。







『…楽しかったよね。』



「ルナ、それ、2回目だよ。」



『だって…楽しかったんだもん。』



「うん……だから、泣かないで。」






楽しかったことを思い出したら、余計に胸が締め付けられて、俺も涙がこぼれそうで、堪らなくなって、ルナを抱きしめた。






幸せだったこの日々に、後悔はないんだ。





あるとしたら、




『…どうして』



ルナは俺の背中に回した腕にギュッと力を込めた。



『…どうして、ユキ君のこと、好きになっちゃったんだろう?』






…それだけ。




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