オトナの事情。
ルナは白いブーケを持って、俺を待っていた。
「一応、表紙はこの後の海でのカット使う予定だけど、もし天気悪くなってダメんなったらこれ使うから、2人とも気合い入れてね。」
『はい』
「はい」
まあ今日は雨降らなさそうだけど~、とは言いつつも念を押され、ルナも俺も力が入る。
そして付けられた注文は、ナチュラルに、という、もう憎たらしいとしか言いようのない、素人にはキツイあれだ。
「ルナは?ドレス、着てみてどう?」
小声で笑いかければ、
『…動きにくい。』
顔をしかめる。
本当はマーメイド型のドレスが良かったが、衣装提供なんかの事情でそれは叶わなかったらしい。
オトナの事情ってやつだ。
「るーな顔しかめない!」
『ごめんなさーい』
「舌出さない!」
『へいへい。』
「向坂君もカタイよ~」
「…すいません。」
「いいか~2人とも、世界で一番愛する人とのウェディングだぞ~」
高田さんに叱られつつも、撮影は進む。