抱き締めたら止まらない~上司の溺愛につきご注意下さい~
私が寝静まってからも、藍原は寝付けずにいた。

ソファーに寝転んで、黙って天井を見つめる。

これからどうしたものか?

とりあえず、心配で連れ帰ったが、ずっとここに住まわせるわけにはいかない。

自分としては嬉しいが、私の気持ちは真逆のものだった。

『勘弁してください、私は部長が怖いです!』

と、言い切られてしまっている。

好意どころか、嫌われているのだから、これ以上思いを押しつけるわけにはいかない。

だが、次の住む場所が見つかるまでは、あるいは、一緒に住んでくれる友人が現れるまでは、ここにいてもらった方が安心だ。

明日はもう少し、落ち着いているだろう。

全ては、私が決めることだ。

藍原は静かに目を閉じた。

…シーンと静まり返る部屋の中、誰かのうなされる声が聞こえて、藍原は目を開けた。

寝室からだった。

悪いと思ったが心配で、その部屋のドアをそっと開けた。


「…渡辺?」
「…だ、…やだ…怖い」

どんな夢を見ているのか?藍原は思わず私の手を握りしめた。

すると、間もなくして、うなされる声はなくなり、静かな寝息だけが聞こえてきた。

藍原はホッとして、それでもその手は離せなかった。

今夜くらいは、心安らかに眠ってほしい。そんな思いからだった。
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