溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「ないけどなに?」
『お見合いしない?』


またきたかというのが、優花の正直なところだ。
頭の中でざっと数えて、これが五度目の見合い話だとわかった。


「やっと再就職できたから、今はまだいい」


自分が恋愛に向かないことは今回のことで痛いほどわかったから、ゆくゆくは見合いするのもいいだろう。でも今は、まだその時じゃない。

今の事務所の居心地の良さもあるし、雇ってもらったばかりで辞めるような無責任なことをするわけにはいかない。


『なにも地元に帰ってきなさいって言ってるわけじゃないのよ。そっちでどう?って』
「そっちって、こっち?」
『そうよ。そちらに住んでる方で、とっても誠実で素敵な方を紹介してもらったの。だからどうかと思ってね。断るにはもったいない方なのよ。ね? どう? お母さんは大賛成なのよ。お父さんもいい青年だって』


いつになく押しの強い母親に優花はタジタジになる。そんな素敵な人ならば、見合いしなくても結婚できるだろうにと思ったが、あまりの猛攻になにも言えない。
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